傍で見る人から実践者になりたかった。
あきらごとうさんSBS1期生
―― Gさんが、初めてスロービジネスという言葉に出会ったのはいつですか?
G: 初めてスロービジネスという言葉に出会ったのは2003年だったと思いま
す。なんか、しっくり来ないなぁ、そんな感じでした。ナマケモノ倶楽部(ナマ
クラ)の理事をしている時だったんです。理事会の場で、中村隆市さんや辻信一
さんが「学問と運動とビジネスをつなげる」という話をしていて、03年はスロー
ビジネスをナマケモノ倶楽部として積極的に打ち出していこうとの方向性が打ち
出されたんです。それを聞いていて初めは「スロービジネス?う?む、ビジネス
かよ。結局金儲けになるんじゃないの。ビジネスという単語じゃなくて、スロー
生業(なりわい)とかの方が良いんじゃないの?」と「ビジネス」というキー
ワードに強い拒否感を持ったことを覚えています。
その後、ナマクラがROR2003キャンペーンを展開する時に、院卒で時間があった
こともあり、僕はコアスタッフになりました。その過程で、環境問題やエコビジ
ネス、社会的起業関連の本をたくさん読みましたね。元からそういった分野には
興味があったので吸収も早かったと思います。レスターブラウンの『エコビジネ
ス』やポール・ホーケンの『自然資本の経済』といった本です。これらの本を通
して、ビジネスを通じてよりよい世界や社会を構築できるんだ、それで食ってい
くことができるんだなぁと認識を深めていきました。
RORキャンペーン後にナマクラ代表としてピースボートにも短期間乗船させてもらう。
インド・ムンバイの世界社会フォーラムにも参加。
世界の人々の「怒り」のエネルギーを実感。スロービジネスにも関心が高まる。
キャンペーンの中で、スロービジネスの実践者として、スローウォーターカフェ
の藤岡亜美さん、油藤商事の青山裕史さん、丸谷一耕さん、赤星さんといった人
との出会いがありました。
実際にスロービジネスをしている人たちですね。フェアトレードやBDF(バイ
オディーゼル)、環境コンサル、麻、といった自分のテーマを持っていてそれを
ビジネスにしている。「良いなぁ」「すごいなぁ」という感心と同時に「あ?僕
にはこういったピンポイントのテーマがないなぁ」というのも感じていました。
それと同時に、強く思ったことがありましたねぇ。イベントのコーディネートな
ど裏方の仕事も面白いのですが、人前で自分の実践を話す方が面白そうだなぁ、
と。目立ちたがり屋なだけかもしれませんが。。。
―― それが2003年ですね。スロービジネススクール(SBS)は04年からです
ね。どういった経緯で参加するようになったのですか?参加する時点では何をな
さっていたのですか?
G: 直接的にはコーチョーの中村さんから「今度、スロービジネススクール
というやつを始めようと思っているんだけど、ぜひ参加して欲しいな」とメール
をもらったんだと思います。ROR2003のキャンペーンをやって、スロービジネス
について関心が高まっていたので「コレは面白いことになりそうだ」とすぐに参
加することを決めましたね。同じようにキャンペーンスタッフをやっていたF君(ふじいもん)も同じような経緯で参加したことを覚えています。
実際にスロービジネスを自分たちで創っていこうという姿勢と、「まあ10回やっ
て3回成功すれば良い。それで3割バッターだしね」といったコーチョーのスタン
スにも共感しました。
入った時は04年の5月ですね。僕は農文協という食と農をテーマにした出版社に
勤め始めたところでした。日本全国を移動遊牧する生活が始まったところでした
ね。宿に泊まって、その地域の農家に会いに行って書籍の営業と現場の情報収集
をする仕事でした。
―― 入学当初はどんなことを期待していましたか?また、その期待と現実の
ギャップはありましたか?
G:期待していたのは、スロービジネスに関するアイディア交換、自分のス
ロービジネスの種を見つけること、スロービジネスつながりを拡げることなどで
したね。
自分のスロービジネスの種を見つけることはそう簡単ではなかったですね。
立ち上げ当初は皆すごいエネルギーがあって、合宿に行くと「あんなこともス
ロービジネスになるんじゃないか」「こんなことをスロービジネスにしたら面白
いんじゃないか」と活発に議論していたことを覚えています。
―― SBSに入った後は、具体的にどういった活動をしていましたか?
G: まずは大量のメールと格闘していましたね。でも、苦痛ではありません
でした。
日常の大半を占めている仕事はそれなりに面白かったのですが、自分の時間があ
まりない、常に宿暮らしで生活がないなどのストレスも多かったんです。
そんな時に、自分のアイデンティティを保つのに「僕にはSBSの仲間がいる、
ネットワークがある」と思えることは大きかったですね。
移動遊牧と称しながらストレスの多い生活の中で、移動していることを最大限い
かそうと思って積極的に「寄り合い」を呼びかけていきました。長野、仙台、八
代(熊本)、熊本市、福岡、名古屋などいくつかの場所でSBS学生と交流する
ことができました。名古屋ではNさんが企画してくれて僕が日本の農村につい
て話をする機会も作ってくれました。
後は、東京に戻った時に、SBS学生にやってもらうアンケート作成をしたり、
普段使っている調味料について調べる暮らしのアンケートなんかも企画して実施
しましたね。
「とにかくスロービジネスにつながる何かをやりたい」ということと、SBSが
らみの何かをすることで自分を保っていたというところがありますね。
―― その後、GさんはSBSのスタッフになっていくのですよね。その経緯を教え
てください。
G:移動遊牧の仕事をしていて、結局まだ傍観者だなぁ、という気持ちがだん
だん強くなっていったんです。RORのキャンペーンをやっていた時に現場や実
践者の立場にあこがれて、現場に近い仕事をと思って農村を駆け回ることをして
いたんですね。直接農家とやりとりをして、農村に入り込んでいくので確かに現
場に近いんですが、やっぱり自分は実践者じゃないんですよね。
農山村を見て回るうちに、「豊かさの源泉は農山村にあり」ということも強く思
うようになりました。自然の豊かさ、食文化の多様性、厚い人情、ゆったりした
生活環境、そういったものをたくさん見てきたので「コリャ、農山村に住んだほ
うが良いなぁ。自分も農的営みをしながら地に足を付けた生活をしたいなぁ」と
思うようになりました。
当時HPで移動遊牧の記録を発信していたのですが、「日本の農山村に都市から
の人工逆流が起きることが大切。ワカモノが農村に入ることが大切」といった文
章を書きました。書いた時に、強く思ったのは「じゃあ、まず自分が実践してみ
せろよ!」という自分への突っ込みでした。
でも、どこか農村に移り住むアテがあるわけでもなく、悶々と仕事をしていたの
を覚えています。
そろそろ地に足を付けたいな、ということをSBS内でも発信していたのだと思
います。そんな時に中村コーチョーから突然電話が掛かってきました。今でも
はっきり覚えてますよ。「あ、ゴトー君。今良い?えーっとですねぇ、うちで働
く気はあるかね?」って。
当初はウインドファームの営業仕事を主体にやって欲しいという話だったんです
ね。ついでにSBSの仕事もという感じでした。
正直迷いました。というのも、僕全然コーヒー飲まない人間だったんですよ。だ
から、「うーむ、良い話だけど、コーヒーかぁ」って。
けれども、悩んでいるうちにいろいろと状況が変わってきたんですね。SBSの
合宿もやった赤村にSBSの拠点を作れそうだということ、カフェをオープンさ
せるということ。「そうやね。ま、コーヒーの営業は良いから、赤村でのSBS
の拠点作りとカフェの立ち上げなんかをチーフ的にやってくれないかな」という
話になりました。
そうなると、願ったり叶ったり。今まで傍らで見る立場の人間だったのが、農村
に入って農的営みも実践できる、コーヒーのフェアトレードというスロービジネ
スにも関われる。赤村での人とのつながりも太いものがあると聞いていたので勢
い勇んで福岡へ、という感じでしたね。
あ、でも、住む家は見つからない、当初使う予定だった豆腐工場の跡地は利用不
可能になる、カフェオープンの話もグラつき始めるなど、いろいろなことがあり
ました。
―― SBCのスタッフ、理事をされながら今考えていることはどんなことですか?
G:SBSは当初「とにかく何かやっていこう」というスタイルで走っていた
と思います。今は、走ってきた分いろいろなことが見え始めていますね。学生が
活動し易い仕組みを作ること、学生制度を練り直すこと、SBCとしてどんな
サーヴィスを提供していったらスロービジネスが拡がるのかといったこと、予算
や活動方針を計画的に立てることなどなど。考えてみれば、たった3年ぐらいで
ここまでの組織になっていること自体がすごいことです。ウェブショップもあれ
ば、ゆっくり村もあれば、地域通貨も動き始めそう、ウェブも充実し始めていま
す。E組の活動も、今までの蓄積や試行錯誤があったから走り始めていると思っ
ています。
次の課題は、SBSの仲間からスロービジネスで食っているよと言える仲間を増
やしていくことかなぁ、と思っています。そのためには、SBSの中に多様な人
がいて、それぞれのできる範囲のできることをしていきながら、トータルにス
ロービジネスが拡がり伝わっていくことが大切だと思っています。
ガンジーの「be the change」という言葉が好きなんですけど、日本語にすると
「問題ではなく答えを生きる」ということなんだと思っています。これからの
SBS/SBCの展開がとても愉しみですね。
―― ありがとうございました。
以上
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