みなさん“古民家”と聞いて何を思い浮かべますか?
私は山の麓・里山の風景といったものを連想していました。
ところが東京は新宿から急行に乗れば20分位で着く、
地元西東京に築150年の古民家があったのです。
東京で唯一、古民家でお年寄りのデイサービスをしているところがあると知り、
訪ねてみました。

道路から敷地内への入り口には、「和のいえ 櫻井」という
文字が染め抜かれた暖簾がかかっていてとても趣があります。
玄関へと向かう石畳の左手には庭石やもみじなどの植木、
さらにその奥には立派な蔵があり、右手には高さ4メートルほどもあろうかと
思われる石灯篭がありました。
私が始めてお邪魔したのは、平日のデイサービスをしている時でしたので、
外には洗濯物が干してありました。玄関を入るとすぐそこは、
ひろーいワンフロアになっているフローリングの空間で、傍らには置き囲炉裏もあります。
ここがお年寄りが寛ぐメインの場所です。見上げると天井は高く、
太い梁が見えます。開放感があって居心地がよさそうです。
ここの置き囲炉裏で沸かしたお湯を使ってお茶も点てるそうです。
そんな作法を教えてもらえるのも、昔やっていたお年寄りがいるからこそ、ですね。
このフロアの左手にはいくつか部屋があり、文化講座やマッサージ等に使われていて、
それを取り囲むように長い廊下があります。
木の寿命はそれが伐られた時の樹齢の2倍と言われているそうですが、
丁寧に使い込めば使い込むほどますますつやが出てきそうだなぁと思わせる廊下です。そこの窓際に渡された物干しには乾燥中の束になったドクダミがあるのが目にはいりました。きっと3時のお茶になるのでしょう。
2度目にお伺いしたときには、いすの上に梅を入れた大き目のざるが置かれ、
日当たりのよいこの廊下で干していました。作り方をお年寄りに聞きながら、
スタッフが一緒に作るそうです。
2年ほど手付かず状態だったというこの古民家に、様々な人が集まり始めています。
デイサービスに来るお年寄り、そこで働くスタッフ、
蔵の補修にボランティ アできてくれる人々、
楽市を開いて地域とのつながりを深めようと協力してくれる人々、
歌・踊り・楽器演奏などボランティアで楽しませてくれる人々などな ど。
お年寄りを中心としたここでの過ごし方は、限られた時間ですがここで“暮らす”
ということであり、それはとりもなおさず“生きる”ということでもあります。
また、ここに集まってくる人々に昔の暮らしぶりを伝えていく役割をも果たしている
と言えそうです。
少しずついろいろな所に人の手が加えられることで、
この古民家も息を吹き返したのではないかと感じます。
夏はクーラーなしでも窓を開け放せば涼しい風が入ってきます。
誰にとっても体に優しいのです。これこそ本当のエコな暮らしというものでしょう。
SBSの学生の視点から見た古民家の魅力はこの他にもあります。
敷地の西側にある、今は補修中の蔵を使って何かできないか?ということです。
SBSの学生には多種多様な人がいます。
一週間単位で貸し出すと言うこの蔵を使って、これがSBSです!
というものを集めたら楽しいかもしれないと思ったのです。
エクアドルコーヒーを育む森と高尾の森の写真展、
マヤナッツ関連商品をふくむ目で見る食へのこだわり、
スローフラメンコや創作ダンスの舞台、
SBSで今流 行っている(?)ふんどしや
Tシャツの展示販売を含むスローアートなもの(アニメやフィルムもあるかもしれません)、麻の草履あみワークショップ(または 布草履?)、
アレキサンダーテクニークやエサレンマッサージなどのボディワーク、
化学物質に頼らない自然素材でのものづくりを目指すスロー化学研究会の
ワークショップ、SBSラジオでおなじみの森の本屋さん(詩や本の朗読もあるといいな)、機織体験などなど。
古民家の魅力はたくさんありますが、残念なことに全国にあるこうした古民家は
年々減少しています。
相続税や雨漏り等などの修理費の負担や過疎化で住む人がいなくなるなど、
様々な事情で取り壊される古民家も少なくありません。
西東京での古民家の活用はひとつの良い例だと思いますが、
まだ各地に残っている古民家も地元の人々が知恵を出し合えば活用する道は
開けるのではないでしょうか。古民家に使われた木の寿命が尽きるまで、
住み続け使い続けてほしいと願っています。
(文/西山 靖子)
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