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 2008年5月13日(火) 18:26 JST

設立趣意書

「スロービジネススクール」設立趣意書
2003年11月2日


2003年9月17日、地球の環境悪化による人類存続の危機の度合い示す「環境危機時計」は昨年より10分進み、9時15分で、“滅亡時刻”の12時まで残り2時間45分の過去最悪になったと旭硝子財団が発表しました。

0:01-3:00は「殆んど不安はない」
3:01-6:00「少し不安」
6:01-9:00「かなり不安」

9:01-12:00は「極めて不安」を示しています。地球温暖化、森林破壊・砂漠化・生物多様性の減少、有害化学物質などに対する不安が極めて大きくなっています。

1992年に地球サミットで、子どもを代表して「伝説のスピーチ」をしたセヴァン・スズキは、近年、環境問題の話をする前によくこんな話をします。「46億年の長い地球の歴史があって、今の生物が棲める地球ができてきた。私たちが生きるために不可欠な大気や水や食物がある地球は、奇跡のようなできごとの連続によってできてきた。本当にかけがえのない地球なのだ」と。宇宙の中に奇跡のように誕生した水の惑星、生命の星を現代人は破壊しようとしています。人が人を殺す戦争や武力攻撃も後を絶ちません。そして、その原因と私たちの生き方は無縁ではありません。

エクアドル、バイーア・デ・カラケス市での「国際マングローブデイ」を記念 して、マングローブ植林に参加する中村(1999年2月)



「こんな生き方はイヤだなあ。限りある人生をもっと大事に生きたいし、もっといのちを大切にする社会に変えたい。」そんな思いを持つ者たちが、「ナマケモノ倶楽部」という環境文化NGOをつくりました。「ラブ、ピース&ライフ(いのち)」を合言葉とするナマケモノ倶楽部には、文化人類学者と環境運動家と企業経営者の 3人の世話人(設立者)がおり、設立当初から「学問と運動とビジネスの融合」を目指してきました。これまで分断されてきた3つの領域をつなぐことが、環境や人のいのちを大切にしない「ファーストな社会」を変えていく大きな力になると考えたからです。こうした思いの中から「スロービジネス」という言葉が生まれました。多くの市民団体が「運動」によって社会を変えようとしているなかで、ナマケモノ倶楽部は運動だけではなく、個々人の生活と仕事を見直し、「スローライフ」と「スロービジネス」を育てていくことで、社会を変えていこうとしています。

経済という言葉の語源である「経世済民」の意味が、「世の中を治め、人民の苦しみを救うこと」や「世の中を平和にして、人びとを幸せにすること」にあったように、経済を成り立たせるビジネスも本来は魅力的なものだったはずです。ところが、現在のビジネスの大半は、当然のように自分の会社や自分の国だけの利益を求め、未来世代のことにも配慮してきませんでした。その結果、環境破壊と貧富の差が拡大して、暴力的な世界が広がっています。こうした世界の根っこには、「独り占め」や「限度を知らない欲望」といったものがあり、それらが生み出す「弱肉強食の社会」が広がるほど、「食われる側」にはなりたくないという意識が強まり、競争が加速して、「ファーストビジネス」が拡大していったのではないでしょうか。こうした社会のあり方を変え、本来の経済を取り戻すにはどうすればいいのでしょう。そのための重要なキーワードの一つが「独り占め」の対極にある「シェア(分かち合い)」ではないかと思います。

インタグコーヒーの生産者と中村



ナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さん(文化人類学者)の対話集『ピースローソク』(ゆっくり堂)のなかに坂本龍一さんとの対話があり、こんな一節があります。



坂本: ぼくの大好きな本で『イシュマイル』というゴリラの本があるんですけど、その本のなかで、世界には、リーバース(Leavers)とテイカーズ(Takers)という人たちがいると書かれてるんです。

辻: 残す人と奪う人ですね。

坂本: そう。その残す人たちというのは、自分たちが使う以上に物をとらない。必要以上に自然を搾取しない。

辻: 残す人というのは、いわゆる先住民族。今、地球上で、先住民族が、もともとの伝統的な暮らしを保って生きられているというのは、ほんのわずかになってしまった。

坂本: 実はぼくら日本人もつい100年とか150年前ぐらいまでは先住民だったんです。それが自分たちもよく気がつかないうちに、徐々に変わってきたんですね。




この対話には、世界と日本の環境が悪化してきた原因が語られています。例えば、アイヌの人びとのサケ漁は、近代漁業のように「できるだけたくさん取る」のではなく、未来世代のことに配慮して、自然の摂理に従って、資源が枯渇しないように産卵後のサケを集めて保存食にして暮らしていました。カナダ先住民の漁師もこんなことを言っています。

「数の子は食べないでほしい。ニシンを捕まえて腹から数の子を取り出したら母親も子どもも全滅してしまう。だから数の子ではなく、ニシンが昆布に卵を産みつけた子持ち昆布を、制限しながら食べてほしい。そうすれば、母親は何年も産み続けることができるし、子どもも育って、未来世代もずっと、海の幸を食べることができる。」

「残す人」は、人や自然や未来世代のことを考えて、長い間「分かち合い」を大切にしてきました。ところが、いつの間にかこうした「分かち合い」や「残す文化」が、世界各地で「奪う文化」の勢力拡大によって破壊され、衰退していきました。

地球環境サミットで、12才のセヴァン・スズキが、大人たちにこう言いました。



2日前ここブラジルで、家のないストリートチルドレンと出会い、私たちはショックを受けました。ひとりの子どもが私たちにこう言いました。 『ぼくが金持ちだったらなぁ。もしそうなら、家のない子すべてに、食べ物と、着る物と、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに』 家もなにもないひとりの子どもが、分かちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。大人は私たちに、世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。 たとえば、争いをしないこと 話しあいで解決すること 他人を尊重すること ちらかしたら自分でかたずけること ほかの生き物をむやみに傷つけないこと 分かちあうこと そして欲ばらないこと ならばなぜ、あなたがたは、私たちにするなということをしているんですか



ジョン・レノンは、平和を願うラブソング「イマジン(想像してごらん)」で、こう歌っています。



No need for greed or hunger(欲張ったり飢える必要もない)
Sharing all the world(世界を分かち合っている)




しかし、21世紀に入っても戦争や武力攻撃が続けられ、環境の破壊と汚染が進行しています。自国の「国益」を優先して、地球温暖化防止のための京都議定書を離脱した米国は、世界最大の軍需産業を持ち、東西冷戦が終結しても軍事行動を繰り返しています。イラクへの国連による大量破壊兵器の査察を否定し、国際世論を無視して武力攻撃を始めました。その米国を日本の首相や政府与党は支持しました。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という憲法を持つ国の首相や政府が、武力による先制攻撃を支持したことになります。その結果、子どもや女性を含む数千人の一般市民が犠牲となりました。(2005年現在、民間人の被害者は10万人以上になっています)

米国は、「大量破壊兵器の危険を取り除くために」と言って、自分たち自身が大量破壊兵器を使用し、「独裁者からイラクの人びとを助けるために」と言いながら、劣化ウラン弾(「小さな核兵器」ともいわれている兵器)を大量に使用して、人口密集地まで放射能で汚染しました。放射能の被害を最も受けやすいのが、細胞分裂の活発な子どもたちです。すでに、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の影響で、子どもたちに多くの被害者が出ています。この兵器の放射能は寿命が長く、毒性が半分に減るのに45億年もかかるため、今後イラクでは、半永久的に健康被害者が出続けることでしょう。一方で、米国政府の高官が関わる軍需産業と「戦後復興」を請け負う建設会社は、「好景気」に沸いています。そして、「正義のための戦争」は、石油や天然ガスの利権をももたらしてくれます。

セヴァンと中村



2002年11月にカナダの環境活動家、セヴァン・スズキをナマケモノ倶楽部とともに日本に招聘。九州での講演ツアーをコーディネートした。

1972年にローマクラブが発表したレポート『成長の限界』は、環境悪化や資源の消費が現在のまま続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する、と成長から持続可能な均衡への方向転換の必要性を科学的に示しました。そのレポートを中心的にまとめたドネラ・メドウズさんは、20年後の1992年に仲間たちと再び『限界を超えて?生きるための選択?』という本を書きました。その中に、印象深い記述があります。



「持続可能な社会は、絶えず拡大することによって種々の問題を解決しようとする社会よりも、はるかに望ましい社会かもしれない。持続可能な社会に移行するためには、長期目標と短期目標のバランスを慎重にとる必要がある。また、産出量の多少よりも、十分さや公平さ、生活の質などを重視しなければならない。それには、生産性や技術以上のもの、つまり、成熟、憐れみの心、智慧といった要素が要求されるだろう。(中略)そうした未来を実現させるには、全世界がその方向に向かうことが不可欠なのだ。限界、持続可能性、十分、公平、効率といった概念は、障壁でも障害物でもなければ、脅威でもない。われわれを新しい世界へと導く道しるべなのだ。人類のエネルギーと創造力は、権力や財の蓄積をめぐる紛争や武器の改良のためではなく、持続可能性の達成という根本的な課題に向けられるべきである。」




世界の多くの人びとは、これ以上環境を悪化させたくないと考えています。もう、戦争や武力攻撃はやめてほしいと願っています。「いのちを大切にしない社会を変えたい」と思っています。そうした思いをどのように生かしていけばいいのでしょうか。限度を知らない「奪い取る社会」を、もう少し「分かち合う社会」に変えていくには、環境や人のいのちを大切にする仕事が、少しずつでも増えていくことが重要だと私たちは考えています。私たちは、そんな「いのちを大切にする仕事」のことを「スロービジネス」と名付けました。そして、少しずつでもスロービジネスが広まることを願って、「スロービジネススクール」を設立することにしました。
皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

「スロービジネス スクール」設立 発起人
ナマケモノ倶楽部世話人
株式会社ウインドファーム代表
中村隆市


最終更新日: 2007年12月17日(月) 09:15 JST; 1,718 閲覧件数 印刷用画面


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